台湾で公用語とされる言語というと、「台湾語」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

しかし実際の公用語に当たる言語は「台湾華語(中国語)」で、台湾語を日常的に使う人は30%程度です[1]

さらに、若者に限ると台湾語が話せる人口は全国で22.3%しかおらず、台湾人でも話せない・聞き取れない人も多い言語です[2]

台湾語とは、中国の福建省南部の方言である閩南語をベースに台湾で独自に進化した言語です。

台湾語は「台語(tái yǔ)」と呼ばれていますが、一方で台湾では人口の約60%以上が、日常的に台湾華語(中国語)を使用しています。 

台湾語は中国語・台湾華語とは異なる

台湾語とは、中国の福建省で使用されていた閩南語をルーツとする言語のことです。

1600年代に中国福建省から台湾にやってきた人たちが話していた言葉が台湾本土に広まり、独特の表現方法や語彙が足されたものが「台湾語」になります。

話し言葉を基盤として進化を遂げた言語であるため、文字表記の仕方が中国語と大きく異なります。

文字表記の他に、発音も異なります。

台湾華語(中国語)には4つの声調がありますが、台湾語には8つの声調が存在します。ほかにも「変調」という発音の法則もあり、台湾の公用語である「台湾華語(中国語)」とは全く異なるものです。

台湾語は台湾南部の地域で主に使われる

台湾語は、台湾の南部で多く使われている言語です。

南部の都市である高雄では、台湾語を話す人口が唯一100万人を超えています。

次に台南、そして台中でも90万人以上が台湾語を日常的に利用しているといいます。

台湾の総人口2,300万人のうち、約700万人程度が台湾語を話すことができると言われていますが、その半分以上が台湾南部に集中していることがわかります。

台湾語話者の年齢層は55歳以上が最も多い

さらに、台湾語を利用する人の年齢層は、55歳以上のお年寄りに偏っています。

台湾のメディアによれば、35歳以下の人口の8割が、14歳以下の人口の9割以上が、台湾語を日常的に使わないといいます。

首都である「台北」は、台湾北部に位置しており、若者は教育や就業のために首都に集まります。

結果として、台湾語の中南部での利用密度が高まっています[3] 

台湾語には日本語が混ざっている

閩南語が現在話されている台湾語に変化する過程に、日本語が大きく関わっています。

1895年から約50年間日本が台湾を統治していたことは、みなさんも歴史の授業で学んだことがあるのではないでしょうか。

日本人が統治中は公用語である国語を「日本語」とし、日本語教育が行われていました。そのため今でも、80歳以上の台湾人は、流暢な日本語を話される方が多いです。

この歴史により、台湾語は日本語に大きな影響を受けました。

学校や仕事場など家の外では日本語を話しているものの、家の中では「閩南語」を話すという人が増え、いつのまにか閩南語と日本語を混ぜて話す文化が浸透するようになりました。

終戦後「北京語」が公用語に変わった後も、一部の日本語がそのまま「台湾語」として使わわれています。私たち日本人が聞くと少し訛っているように聞こえるかもしれませんが、発音はほとんど同じです。

 

以下は日本語がそのまま台湾語として使われるようになった単語の一部です[4]

意味文字表記(台湾語)発音中国語(台湾華語)
りんご林狗lìn-gòo蘋果
トマト投馬偷thoo-má-tooh番茄
看板扛棒kha̋ng-páng招牌
休憩QKkhiű-khé休息
運ちゃん(運転手)運將ùn-tsiàng司機
おじさん歐吉桑oo-jí-sáng中年男子、爺爺
おばさん歐巴桑oo-bá-sán中年女子、奶奶

この他にも外来語である「ライター」や「オートバイ」のほか、

頭がまるでコンクリートのように固く、融通のきかない人を形容する「アタマコンクリ」など、おもしろい表現の台湾語がたくさんあります。

台湾語のほかにもある台湾の言語

台湾では、台湾華語(中国語)を話す人が6割以上、台湾語を話す人は3割程度とお話しました。

しかし、実は台湾には台湾華語と台湾語以外にも様々な言語があります。台湾語のベースとなったのは「閩南語」ですが、福建省の西部や広東省の東部で話される方言である「客家語(はっかご)」のほか、清国に占領される前から台湾本土に住んでいた原住民族の言語など多岐に渡ります。

台湾は、日本の九州ほどの面積で、人口2,300万人ほどですが、様々な民族・言語からなる他民族社会なのです。

台湾語は勉強すべきか

台湾語は、台湾の歴史が大きく影響しており、台湾の代表的な言語であることに間違いはありません。しかし現地での生活において、必須の言語ではありません。

実際に台湾人でも台湾語を話せない人がたくさんいます。

特に35歳以下の若者は、台湾語を聞くことはできても、話すことはできないという方が多くを占めています。

日常生活においても、全てが公用語である中国語が使われているため、外国人である私たちが話せなくても困ることは一切ありません。

しかし、もし台湾語を話すことができれば、台湾ではプラスに受け取ってもらえることが多いでしょう。

台湾語は中南部で多く普及している言語です。

台湾の中南部以降の企業と仕事上でやりとりがある人、住む予定がある人、台湾人のパートナーが中南部の出身である場合には、台湾語を話すことが出来なかったとしても、簡単な挨拶などを覚えておくと良いでしょう。

短期の旅行で台湾に行くという場合でも、台湾語の挨拶を少しでも覚えると、珍しいと喜んでもらえるでしょう。

簡単な台湾語の挨拶

前述のように、台湾で日常的に台湾語を話す人の人口は3割程度です。

しかし有名な単語やフレーズは、台湾語を話さない台湾人にも浸透しています。

誰にでも通じる簡単な台湾語の挨拶には、例えば以下のようなものがあります。

意味文字表記(台湾語)発音中国語(台湾華語)
こんにちは哩賀lí hó你好
申し訳ない歹勢phái-sè不好意思
ご飯食べた?※食飽未tsia̍h-pá-bē吃飽了嗎?
ありがとう多謝to-siā;謝謝

※直訳だが、「こんにちは」のような定番の挨拶として使われることが多い

まとめ

台湾で話されている言語のうちのひとつである「台湾語」について紹介しました。

台湾語は声調が中国語よりも多かったり、見慣れない文字表記かもしれませんが、日本語にもルーツがあるため、興味がある人は多いのではないでしょうか?

みなさんも台湾華語を学びながら、台湾語も同時に勉強してみてはいかがでしょうか。

 

脚注