台湾の公用語は、中国語です。台湾では「国語」や「台湾華語」と呼ばれており、人口の約6割以上が中国語を日常的に使用しています。
しかし、台湾には複雑な歴史とともに他にも全く語源の異なる言語が存在しています。
中国語以外で利用者の多い順に、台湾語、客家語、原住民語です。
これらは、第二公用語、第三公用語として、台湾社会に浸透しています。
この記事では、それぞれの言語の歴史や特徴、地域の分布についてご紹介します。
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台湾で主流の言語「台湾語」とは
台湾語は、台湾国内で「台語tái yǔ」と呼ばれ、国民の30%程度が台湾語を話します。地域別では、台中から南の彰化から台南や高雄にかけて特に使われています。
「台湾語を日常的に利用する人の年齢層は、55歳以上のお年寄りが多く、若年層は台湾華語(中国語)を使います。
台湾のメディアによれば、35歳以下の人口の8割が、14歳以下の人口の9割以上が、台湾語を日常的に使わないといいます。
台湾語を日常的に利用する人の年齢層は、55歳以上のお年寄りが多く、若年層は台湾華語(中国語)を使います。
台湾語の文化
台湾語は、台湾歌謡(台語歌)として多くの歌で使われています。
特に、台湾のポップミュージックや日本の演歌、伝統的な歌謡では台湾語が使用され、世代を超えて親しまれています。
1940年代から1960年代にかけて、台湾の音楽シーンで台語歌が大流行し、その後も根強い人気を誇っています。
台湾の30%が客家人?「客家語」とは
客家(ハッカ)とは「外来者」や「移住者」を意味し、彼らが他地域から移住してきたことに由来します。客家人は数世紀にわたり南中国、特に広東省、福建省、江西省などの地域に移住し、農村部に定住しました。
その後、17世紀から18世紀ごろ台湾に移住してきた人々を台湾の客家といいます。
そして、彼らが話している言葉を客家(はっかご)と言います。
台湾で客家語を使う主な地域
客家語の文化
著名人の中にも革命家や、作家、国家元首の方で客家出身の方が多く存在しています。
特に客家出身の女性著名人も多く、その理由としては客家の文化が関係しているのではと考えられています。
中国では昔、纏足(てんそく)という女性の足を成長させないように包帯などで巻いてしまうというような文化がありました。
そのため、纏足をされた女性は歩くことができない状態になると言います。
客家ではこの纏足文化がなく、男女平等、女性も男性と同じように働くという考えだったため、他の地域と比べて女性も活躍できる社会だったのではないでしょうか。
また、台湾では客家の伝統料理も有名です。
客家人は中国北方から南方に移住してきた歴史を持ち、その過程で農村部や山岳地帯に住み、厳しい環境で自給自足の生活を送っていました。
そのため、料理は保存性が高く、栄養価が高いものが重視されました。農作業に従事することが多かったため、体力を支えるために豚肉や塩漬け、発酵食品などが多用されたと言います。
結果、客家料理は簡素で滋養のある料理が多く、特に塩漬け豚肉や客家豆腐などは日本人の口にも合うと観光客からも人気があります。
16の民族から成る42種類の「原住民語」
台湾ではいまでも原住民が存在しています。
主に花蓮や台東、山の多い台湾中心部に多くいます。
台湾では原住民の歴史や文化がなくなってしまわないように、政府も補助などを多く行っています。
例えば大学などの学費が減免になったり、高校や大学の入学の際に加点されたりなど、さまざまな補助があります。
また、オリンピック選手や、俳優、モデルさんには原住民が多く、スポーツや芸術面に優れています。
今回は台湾でもメジャーな原住民の言語をいくつか紹介していきます。
台湾の原住民・アミ族の「アミ語」
台湾の原住民で人口が1番多いのが、アミ族と言われる方たちです。
総人口は約23万人で、花蓮県、桃園市、台東県に多く住んでいます。
言語は「アミ語」を使います。
アミ語は南島言語系に属し、現在の台湾南島言語系の中で、もっとも使う人が多い言語です。
地域によって、更に細かい言語群に分かれていて、北部のアミ語、中部のアミ語、海岸アミ語、馬蘭アミ語、恆春アミ語などが存在します。
それぞれの単語とアクセントは少しずつ異なっています。
アミ語には文字を使用しないので、彼らの文化は全て口伝されたものです。
アミ族の文化
アミ族の伝統的な祭りとして「豊年祭」が有名です。これは主に8月頃に行われる収穫祭で、踊りや歌、様々な儀式を通じて先祖や自然に感謝を捧げ、村の繁栄と幸福を祈ります。
この祭りは、アミ族のアイデンティティの象徴であり、観光資源としても注目されています。
台湾の原住民・タイヤル族の「タイヤル語」
【特徴】
台湾で2番目に人口が多い、タイヤル族です。
総人口は約10万人で、台湾の北部の桃園県や新竹県、宜蘭県に多いです。
言語はタイヤル語というものを使います。
また、日本統治時代に日本語とタイヤル語が混ざった宜蘭クレオールという言語も存在しています。
【社会構造】
タイヤル族の伝統社会では、家族間の協力や助け合いが生活の基盤となっており、狩猟や農作業、儀式などの共同作業を通じてコミュニティ全体が支え合っています。
特に、父系社会の特徴が強く、家族の財産や名誉は父方の血筋を通じて継承されます。
タイヤル族の文化
タイヤル族の伝統文化の中で、特に注目されるのが顔や体に施される入れ墨です。入れ墨はかつて、成人の証や、戦士としての勇敢さ、または女性が織物を習得したことを示すものでした。
しかし、現在ではこの風習はほとんど行われていませんが、文化的なシンボルとして保存されています。
そして、タイヤル族の文化の中にGagaといわれるルールのようなものも存在します。
Gagaとは、タイヤル族の間で守られてきた伝統的な社会規範や道徳規範のことを指します。Gagaは部族全体に共有されている倫理観やルールで、家族やコミュニティの結束、自然との共生などが強調されています。
台湾の原住民・パイワン族の「パイワン語」
【特徴】
パイワン族の総人口は約11万人で、台湾の南部の屏東県や台東県、高雄市に多いのが特徴です。
言語はパイワン語というものを使います。
【社会構造】
パイワン族は他の原住民と比べて、社会構造が特殊です。
パイワン族は古くから山岳地帯に定住していて、強固な社会階層制度が存在していました。
伝統的なパイワン族の社会は貴族階級と平民階級に分かれており、特に族長(チーフ)の家系が重要視されていました。貴族の家柄は土地の所有や儀式の主催など、部族の運営に大きな役割を果たしていました。
パイワン族の文化
パイワン族の文化は、多様な伝統工芸や宗教儀式に影響を与えています。
彼らは彫刻、刺繍、陶器などの工芸が得意であり、特に蛇をモチーフにした彫刻や装飾が有名です。
パイワン族にとって、蛇は神聖なシンボルであり、王族の象徴として尊重されています。
特にビーズ細工で有名です。ビーズは社会的な階級や富の象徴として使われ、特別な儀式や結婚の際に重要な役割を果たします。
台湾の原住民・プユマ族の「プユマ語」
【特徴】
プユマ族の総人口は約6万3千人で、主に台湾の中心部の南投県や高雄市、台東県に多いです。
プユマ族の起源は、台湾東部の台東平原にあるとされ、紀元前からこの地域で生活を営んでいたと考えられます。
彼らは主に農業や狩猟を生業としており、自然の恵みを生かした自給自足の生活を送ってきました。
言語はプユマ語というものを使います。プユマ語には幾つかの方言があり、主に台東県の沿岸部と内陸部で異なる方言が使用されています。
【社会構造】
プユマ族は、伝統的に男性が重要な役割を担う父系社会であり、長老や首長が部族の決定権を持っていました。
また、各部族には「青年会所」(サブラン)と呼ばれる、若者が集まり共同生活を行い、社会的な規律や技術を学ぶための施設が存在しました。
プユマ族の文化
プユマ族の文化は、特に儀式や祭りに重きを置いており、自然や祖先を敬う伝統が強く根付いています。
プユマ族の代表的な文化や伝統をいくつか紹介します。
- ハンガリ・ヤハヤ(成年儀礼)
プユマ族の代表的な儀式の一つが「ハンガリ・ヤハヤ」と呼ばれる成年儀礼です。これは、若い男性が正式に大人として認められるための重要な儀式で、厳しい訓練や試練を経て、体力と勇気が証明されます。
- 年祭
プユマ族のもう一つの大切な祭りが「年祭」です。この祭りは、毎年12月から翌年の1月にかけて行われ、農作物の収穫を祝うとともに、祖先や精霊に感謝を捧げるものです。
年祭では、歌や踊りが披露され、食事や酒を共にすることで、部族全体の結束を強めます。
まとめ
台湾は一つの小さい島国ですが、このようにさまざまな民族、言語が入り混じって生活しています。
他の言語を取り入れたり、お互いがいい意味で干渉せずに過ごしているところも台湾のいいところです。
公共交通機関などで、台湾語、客家語が使われているところもあるので、台湾に来た方は是非きいてみてください。
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