台湾で話される中国語は、台湾華語と呼ばれます。
文法や単語のベースは中国で話される中国語と同じですが、字体や発音、使う単語などが異なる場合があります。
また台湾には中国語とは異なる言語の「台湾語」が存在します。
今回はそれぞれの違いについてご紹介します。
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中国語とは
中国語とは、中国で話される標準語のことを呼びます。
中国国内では「普通語」や「北京話」などと呼ばれています。
中国は14億人以上の人口を抱える国です。
広大な土地は北はロシアと、南はタイやベトナムと国境を挟んでおり、中国本土にはそれぞれの土地と民族の言葉、方言が存在します。
そのため、国(政府のある北京)が統一した標準語が国内では「普通話」や「北京話」と呼ばれています。
台湾華語とは
台湾華語は、台湾国内では「國語」と呼ばれています。
國語は中国語とは違い、台湾で話されている中国語を指します。
台湾華語の読み方は中国語とほぼ同じです。
台湾は、日本の九州ほどの大きさですが、人口は九州よりも多く、約2300万人です。
1949年に国民党政府が台湾へ移ったのち、40年近く中国大陸の共産党政権と敵対しており、 お互い行き来できない状況が長く続いていました。
その間に、 言語習慣や言語政策の違いなどにより、発音にもはっきりした違いが現れました。
台湾語とは
また、台湾には「台湾語」、通称「台語」と呼ばれる言語があります。
これは台湾華語とはまた違う、台湾人のみが使う言語です。
中国南部の福建省の方言である「閩南語」をベースに、日本語がミックスされているのが「台湾語」です。
台湾に住む漢民族は、福建省から移ってきた人が多く、元々「閩南語」を使っていました。
その後、台湾は1895年から1945年までの50年間にわたり、日本によって統治されることになり、その過程でいくつかの日本語が台湾に定着し、台湾語のひとつと呼ばれるようになりました。
例えば、台湾語の中にある日本語には以下のような表現があります。
台湾語は特に台湾の南に行くほど話す人が多くなります。
中南部では年配の方ほど台湾華語よりも台湾語を話す傾向にあります。
台湾華語(中国語)を学んでいるのに、現地に行くと全くわからない発音があった、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
これは、相手が台湾語を話していた、という可能性が高いです。
では、次に本題の中国語と台湾華語についてみていきましょう。
中国語、台湾華語の違い
漢字の表記方法、入力方法が違う
①漢字の表記方法
中国語と台湾華語では、漢字の表記方法が違います。
中国語では基本簡体字を使うのに対し、台湾華語では繁体字を使います。
ほかには、広東語でも台湾華語と同じ繁体字を使います。
もともとは中国も繁体字を使っていましたが、簡略化することで国民全体の漢字の識字率を高めることを目的に簡体字を使い始めました。
②入力方法
入力方法にも違いがあります。
中国では、ローマ字を使ったピンイン(拼音)で文字を入力します。
台湾だと、記号のような注音というもので入力します。
ピンイン(拼音)は漢字の発音を一つ一つ打っていく方法で、注音は子音の記号と母音の記号を組み合わせる方法です。
ピンイン(拼音)と注音では、以下のように入力する画面が異なります。
台湾人は、注音で台湾華語(中国語)を学びます。
ピンイン(拼音)は、中国で使われる中国語の入力方法ですが、ローマ字で覚えやすいため、台湾では外国人が主に利用しています。
③漢字の縦書き、横書き
中国ではピンインが導入されたことにより、縦書きから横書きに変わりました。
台湾では注音も縦書きで表記されるので、国語の教科書なども縦書きのままの方が多いです。
発音が違う
①声調の起伏
中国語を習ったことがある方なら誰もが通る難関、発音です。
中国語には、声調と呼ばれるアクセントのようなものがあります。
この声調は、第一声、第二声、第三声、第四声の四つに分かれています。
中国語と台湾華語だと、この声調の違いもあります。
下の図をみてみましょう。tone1〜4はそれぞれ第一声から第四声を表しています。
それぞれの声調の違いを解説していきます。
- 第一声(青)
まず、普段の声を3の位置とすると、
台湾華語の第一声は4の位置、中国語は5の位置になっていますね。
第一声は中国語の方が高い音になります。
- 第二声(赤)
台湾華語は3の位置から少し下がって上に上がるような音ですが、中国語の方は3より少し低い2の位置から始まり、最終的には5まで音を上げています。
中国語は音の起伏が大きいですね。
- 第三声(緑)
続いて第三声です。台湾華語は3の位置から1に下がり、最後に少しあげる、もしくは下げたまま上がらない発音です。
前者のようにはっきり発音することはあまりなく、ほとんどが後者の発音になります。
中国語では2の位置から音を下げているのでそこまで急に音が下がるわけではないですね。音の最後は台湾華語と同じように上がっているのもありますが、中国語の方が元の2の位置よりも上がっています。
- 第四声(黄)
最後に第四声です。
台湾華語は高い5の位置から音を下げる発音です。
中国語もまた同じ位置から始まってますが、すぐには音を下げず、一回少し上げてから下げています。
図を見ると、中国語の方が上がり下がりの起伏が大きいです。
例えば、三声から一声の発音があると、2または1の位置から5まで上がることになります。
なので、中国の方の中国語を聞いていると、全体がすごく抑揚がついた発音に聞こえます。
②同じ単語で声調が違う
見てみると、同じ漢字を使っているのに声調だけが変わっています。
台湾では、その単語だけその声調で発音するものもあります。
巧克力の克の漢字ですが、ここではkēの発音です。ただ、克服はkè fúと本来の声調で発音をします。
③同じ漢字で、発音と声調が違う
今度は同じ漢字ですが、発音も声調も違います。
例えば、ゴミを表す垃圾も全く違う発音、声調になっています。
④R化があるかないか
中国語では、単語の後ろにㄦ(ér)という発音をくっつけることがよくあります。
例えば、這ㄦ(zhè ér)や有一點ㄦ(yǒu yì diǎn ér)などです。
台湾華語ではこのㄦ(ér)というのはつけずにいいます。
このㄦに注意すると、中国語なのか、台湾華語なのか聞き分けることができます。
⑤そり舌音
私が台湾でしばらく生活した後、中国語を聞いたとき、すごく空気の音がするなぁと感じました。
その原因がこのそり舌音(zh,ch,sh,r)の発音が中国語の方が強いことにあります。
もちろん、台湾華語もそり舌音を使いますが、そこまで舌をそらさない発音をするので、中国語独特の空気の音があまりでなくなります。
⑥台湾華語は軽声(けいせい)が少ない
台湾華語でも、爸爸(bà ba)や爺爺(yě ye)の二音節目、または筷子(kuài zi)などの子などは軽声で読まれますが、先生(xiān shēng)や休息(xiū xí)などは本来の声調で発音します。
文字は基本的に本来の声調で発音するという習慣が定着しているので、軽声の発音で意味が区別できる漢字も、台湾華語では本来の声調で発音されます。
使う単語が違う
中国語と台湾華語は使う単語が違うものもあります。
前に日本の友達からこの中国語の意味なに?と聞かれた時、台湾華語では使わないなぁと思った単語がありました。
ここではいくつかの種類に分けて紹介していきたいと思います。
①食べ物編
食べ物の単語でも色々違うものがありますが、例えばジャガイモが中国語と台湾華語とでは全く違います。
中国語のジャガイモは土豆(tǔ dòu)、台湾華語だと馬鈴薯(mǎ líng shǔ)になります。
土豆はなんとなく意味が想像できますが、馬鈴薯はあまり想像つかないですね笑
他の食べ物の単語もいくつか紹介していきます。
②生活編
例えば自転車も中国語と台湾華語とでは違います。
中国語は自行車(zì xíng chē)といい、台湾華語では腳踏車(jiǎo tà chē)といいます。
台湾華語の自行車はロードバイクを指します。
なので台湾でよく見るユーバイクのようなものは腳踏車といいます。
③上級編
ビジネスや日常生活でもよく使う単語もみていきましょう。
例えば、できるだけ、なるべく〜するという意味の盡量(jìn liàng)ですが、これが中国語だと儘量(jǐn liàng)を使います。
おまけ:台湾華語のスラング表現
若者言葉や、ネットスラングでも中国語と台湾華語には違いがあります。
例えば、以下は台湾ではよく使われているスラング表現です。
太扯了吧:やばいよ
好屌哦:かっけー、イケてる(男性がよく使う)
拍謝(パイセー):すみません
パイセーは台湾語ですが、台湾語を知らない人でもわかるほど浸透している表現です。
まとめ
この記事では、中国語と台湾華語、台湾語の違いについて詳しく紹介いたしました。
中国語といっても場所によってさまざまな違いがあります。これらの違いを完全に理解しなくとも、違うものもあるのだと知ると、中華圏や台湾社会をより深く理解できるのではないでしょうか。